ダライ・ラマ自伝の締めくくり

愛と慈悲の心を育ててゆく上で、わたしにとっては仏教が役立っているが、愛や慈悲といった資質は、宗教があってもなくてもだれにでも深めてゆけるものだと確信している。そしてわたしはさらに、すべての宗教はみな同じ目標、善なるものを培い、すべての人間に幸せをもたらす、という共通の目標を追求していると信じている。方法こそ違っているように見えても、目標は同じなのだ。

わたしたちの生活に、科学がますます大きな影響を及ぼすにつれ、宗教と精神性もまたわたしたちの人間性を考えさせるうえでいっそう大きな役割を担ってきている。両者の間に矛盾はない。どちらも互いへの貴重な洞察をもたらしてくれる。科学と仏陀の教えはともに、すべてのものの基本的合一性をわたしたちに告げているのだ。

チベットのすべての友人への個人的感謝の念をもって、この本を終えたいと思う。

あなた方が、チベット人の苦しみに払ってくださった関心と支えは、わたしたちすべての心を深く打ち、武器を用いず、真実と不屈の決意という強力な武器によって自由と正義のために戦う勇気をわたしたちに与えつづけてくれている。すべてのチベット人を代表し、わたしはあなた方に感謝し、祖国存亡のこのとき、チベットを忘れないでいただきたいと心から願っている。

わたしたちはまた、より平和で、より人間性豊かな、より美しい世界の発展のために尽くしたいと願っている。将来の自由チベットは、救いを求めている人びとすべてに手を差しのべ、自然を守り、平和を促進しようと努力してゆくであろう。精神的資質を現実的、実際的態度と結びつける、われわれチベット人の独自の才能は、それがどのように控えめなかたちであろうと、きっとある特別な貢献を人類になしうるものとわたしは確信している。

最後に、わたしに素晴らしい霊感と決意を与えてくれる短いお祈りを読者と分かち合いたいと思う。

世界が苦しみに耐え

生類が苦しみつづけている限り

この世の苦痛を取り除くために

願わくはわたしもまたそれまで

共にとどまらんことを


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